人がつながる。地域がつながる。ダイドードリンコは日本の祭りを応援しています。

「風の神様」を祀る(まつる)神社として、日本最古の気象台といわれています。「旗上げ神事」では、地元の男衆が身を清め、締め込み姿で高さ約25m樹齢600年の銀杏の木に登り、幅一尺長さ一尺ニ寸の麻の神旗を真竹の先に結わえ、地上30mで旗がなびくように取り付けます。「旗降し神事」まで旗の巻き具合で、風雨の襲来や農作物の豊凶を占います。


シシゾウ:綾部神社の風神祭はいつごろ始まったのですか?
吉戒:綾部神社は鎌倉時代初期の元久2年(1205)の創建で約800年の歴史があります。当社は、風の神様をはじめ八幡様、住吉様、製鉄の神様を祀っています。風神祭はその名の通り、風の神様にちなんだ神事です。この神事の始まりは神社の創建に先立つ951年に遡ります。その年、この地方では台風や大雨など天候不順に見舞われ、疫病や飢饉が広がったため、隆信沙門(りゅうしんしゃもん)というお坊様は人々を救うために山に入り、1万部の法華経を読経することに決めました。隆信は山に入る前に、里人たちに「もし私が途中で死んだら私を風の神様として祀ってください。そうすればきっと皆さまをお救いします」と告げました。50日経った満願の日、里人が山に登っていくと、隆信は9000部のところで息絶えていました。そこで里人たちは隆信の徳を讃えて風の神様として祀り、願いを書いた御神旗を山に揚げたのがこの神事の始まりと伝えられています。
この祭りの正式名称は風神祭ですが、7月15日は旗を揚げるので「旗揚げ神事」、72日間揚げた旗を9月24日に降ろす神事は「旗降し神事」と呼びます。綾部神社の風の神様の祭りとしてはもうひとつ、二百十日の日に隆信が籠ったとされる九千部山(くせんぶやま)にある奥の宮に行き、隆信の徳を讃えるとともに風の神様にこれまでの感謝と祈りを捧げる「九千部参り(くせんぶまいり)」があります。
シシゾウ:旗を何のために揚げるのですか?

吉戒:旗揚げ神事から旗降し神事までの72日間、神職は豊作や人々の幸せを祈願し、朝と夕に揚げた旗を見て気象観測を行います。そのため、この旗は日本最古の気象台とも言われています。旗を揚げるのが7月15日なのは、この時期から台風が発生しやすくなり、稲が収穫の時期を迎えるまで、天候を観測する必要があるからではないかと思います。

シシゾウ:風神祭のみどころはどこですか?

吉戒:御神旗を揚げるところと降ろすところでしょうね。旗を揚げるのは、神社に数本ある御神木のいちょうの木のうちの1本で、樹齢600年で高さが約25mあります。旗を揚げるのは地元の若者3人です。旗を揚げる前に神社前の川でみそぎをした3人は木に登るとそれぞれの持ち場に付き、下にいる氏子の方たちが押し上げる御神旗をつけた約20mの旗竿を協力して引き上げ、縄で木にくくりつけます。高い樹上での作業になるので、この役目をするのは命がけで、下で見守る見物人たちもハラハラドキドキで、3人が無事に降りてくると拍手喝采です。地上約30mのところで風になびく旗はかなり遠くからでも見ることができます。
シシゾウ:御神旗はどのくらいの大きさですか?

吉戒:幅1尺(約30cm)、長さ1尺2寸(約36cm)の白い麻布で、祈願文が書かれています。祭りが始まった当初、山に揚げられていた時代は長い吹流しのような旗だったということですが、現在のように神社で揚げるようになってからは短くなったということです。旗をつける旗竿は真竹を使うことになっています。これは真竹が弾力性があるということで、台風の強風などで折れないようにという古人の知恵でしょう。
シシゾウ:天候はどうやって観測するのですか?
吉戒:旗が風になびく具合を見て判断します。長年の経験から雨が降るとき、豊作になるときなど大方の天候は旗が風をはらんで巻く具合を見ているだけで予測できます。神社のある場所は谷の入り口で、風の通り道になっているところも風を観測するのにはうってつけと言えます。綾部神社の神職は普段から天候観測をして日誌をつけているので、過去から現在までの膨大な記録もデータとして活躍します。旗を揚げて5日後の7月20日には、旗の具合と過去の記録を元にしてその年の天候の長期予報を出します。例えば、昨年でしたら、『台風被害も虫害もほとんどなく、気候は不順がちだがなんとか天候が持ち直すので収穫は平年通り』という予報を出し、大方予報通りの結果になりました。20日以降も旗を揚げている間は短期予報も行い、神社に参拝される方や希望者にお知らせしています。
シシゾウ:旗降し神事はどのように行われるのですか?

吉戒:旗を揚げた3人が再び木に登り、旗竿をくくりつけた縄をほどいて旗を降ろします。旗竿が降ろされると、下で待ち受けていた人たちはワッと集まって早い者勝ちで竹の小枝を折り取ります。地元では、この小枝は家内安全や無病息災、さらには受験のお守りになるということで、これを手に入れることが参拝の方のひとつの楽しみになっています。降ろされた旗はどうなるかというと、色の褪せ方など傷み具合を神職が検分して、7月20日に出した今年の予報が正しかったかどうかを確認します。それから旗を御神前に持って行き、神様に感謝を捧げると風神祭の全ての行事が終了します。


吉戒:旗降し神事の前日の9月23日には綾部神社の秋祭りが行われます。これは、風の神様をはじめ当社に祀られている全ての神様の祭りです。この日一番の見ものは鍋島藩の大名行列を模した行列浮立(ふりゅう)で、はさみ箱や毛槍、鉄砲などの御道具類が鉦や太鼓に合わせて綾部神社の下宮(しもみや)から綾部神社まで練り歩きます。この日、参道には出店もたくさん出るので、子供から大人まで楽しめる祭りとして大勢の見物客で賑わいます。浮立の翌日の旗降し神事当日には奉納相撲も行われます。

シシゾウ:みやき町で吉戒さんのおすすめの観光スポットや特産物を教えてください。
吉戒:佐賀県と福岡県のちょうど県境近くにあるみやき町は、風光明媚で四季折々の景観が美しい町です。秋の鷹取山(たかとりやま)のハゼの紅葉はとりわけ見事です。町外にはなりますが、神社から車で20分ほどのところには歴史ファンにおなじみの吉野ヶ里(よしのがり)遺跡があります。
神社のある綾部地区の名物と言えば、ぼたもちです。鎌倉時代に綾部の地頭が、源頼朝の奥州征伐に従い、凱旋したときに兵士にふるまったと言われるもので、約800年の歴史があります。綾部神社の参道の茶店など綾部地区の和菓子店で販売されています。あんこがたっぷりで舌がとろけるほどおいしいということで、町外や県外からも大勢の方が買い求めにいらっしゃいます。お越しになられたらぜひ味わっていただきたいと思います。

吉戒:日本最古の気象台といわれるこの神事は1000年を越す歴史があります。そして、この神事を通して、台風や強風の被害を受けることなく豊作に恵まれること、家庭が幸福で事業が発展することを祈願し続けてきました。当社にお越しになられたら、1000年以上続いてきた願いの気持ちを汲んで、一緒にお祈りしていただければ幸いです。